【徹底比較】会社売却(M&A)と上場(IPO)~方法・期間・価格~

【徹底比較】会社売却(M&A)と上場(IPO)

目次

会社売却(M&A)と上場(IPO)どちらが良い?

会社売却(M&A)と上場(IPO)どちらが良い?

総合的に見れば会社売却のほうが良いです。

上場(IPO)のメリットは?

最大限の利益を目指すなら会社売却(M&A)より上場(IPO)がおすすめ

会社売却(M&A)のメリットは?

確実かつ短期間で会社の売却を実現したいなら上場(IPO)より会社売却(M&A)がおすすめ


会社売却(M&A)上場(IPO)はいずれも、EXIT(イグジット)戦略として利用される手法です。
EXIT(イグジット)とは「出口」の意味であり、会社を起業し成長させた後、会社を現金化するための出口ということを意味します。

単純な例で表現すれば、若干の資本金で会社を起業し、数名、数十名、数百名と段階的に従業員を雇用・増員し、売上規模や営業利益を拡大した後、特定の第三者にその会社の株式を売却するのが会社売却(M&A)であり、株式市場で不特定多数の投資家に株式を売却するのが上場(IPO)です。

会社売却(M&A)上場(IPO)は、いずれも会社を育てた上で会社株式を売却して現金化するというスキームである点で共通しています。

確実かつ短期間で会社の売却を実現したいならば、会社売却(M&A)
最大限の利益を目指すならば、上場(IPO)
というのが一般的な考え方です。

会社を現金化するための方法としての会社売却(M&A)と上場(IPO)には、以下に述べるとおり、それぞれ長所短所が存在します。

上場(IPO)

IPOとは、Initial Public Offeringの略称であり、「新規株式公開」という意味です。株式を新たに世間一般に公開する、という意味になります。
上場とは、株式市「場」に株を「上げる」(公開する)という意味であり、IPOと同一の意味で用いられることが多いです。

株式市場とは

上場と言うと、東証一部上場、という言葉をよく耳にされると思います。これは、東京証券取引所の運営する「東証一部」という株式市場に上場しているという意味になります。

なお、東証一部は2022年に廃止され、現在は「東証プライム」という名称で運営されています。ほかにも東京証券取引所は東証二部、マザーズ、ジャスダックという株式市場を運営していましたが、これらも廃止されました。
現在、東京証券取引所が運営する株式市場は、東証プライム東証スタンダード東証グロースの3つの市場となっています。

上場基準

これらの株式市場に上場するためには、上場のための形式基準及び実質基準をクリアする必要があります。
この上場審査基準は証券取引所のホームページ上に公開されています。
参考:東京証券取引所 上場審査基準

例えば東証スタンダード市場の形式基準を見ると、以下のようなことが記載されています。
・流通株式時価総額10億円以上
・直近1年間の利益が1億円以上
・上場会社監査事務所による直近2年間の監査

また、実質基準は以下のとおりです。
①企業の継続性及び収益性
②企業経営の健全性
③企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
④企業内容等の開示の適正性
⑤その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項

上場までの期間

上場基準を満たすためには、監査法人による2期前からの監査証明が必要となるため、最短でも上場目標時期の3期前(3年前)から準備を開始する必要があります。
なお、この3年というのは最短の期間であり、実際にはこれよりも長期の時間を要することもある上、上場基準を満たさないために途中で上場断念を余儀なくされる事態も多々発生します。

上場までの流れ

上場までの一般的な流れを記載します。
①IPOコンサルタントへの依頼
②監査法人の選定
③主幹事証券会社の選定(2期前から契約)
④監査法人によるショートレビュー
⑤IPO準備プロジェクトチームの設立
⑥事業計画・資本政策の策定
⑦社内組織体制・コーポレートガバナンスの構築
⑧社内各規則の再整備
⑨内部監査体制・内部危機管理体制の構築
⑩監査法人による外部監査開始
⑪有価証券届出書・目論見書等の上場申請書類の作成

上記の各手続きを実施した上で証券取引所に対し上場申請を行うこととなります。
上場申請を行った場合でも必ず認められるものではありません。

厳格な手続きの理由

証券取引所が上記のような厳格な手続きを要求している理由は、投資家の保護にあります。
すなわち、いったん株式市場に上場された後は投資家の自己判断・自己責任に委ねられることとなりますが、事業計画が杜撰である、お金の流れが不透明であり不正な会計処理がされているなどにより、株式市場に上場している会社を信頼して株式を購入した投資家に、不測の損害を被らせることが有り得ます。
そのような事態を可能な限り防ぐために、証券取引所は、投資対象の最低限の安全性を担保するために上記のとおり一定の上場基準を設けているのです。

株式の価格(創業者の利益)

様々な手続きを乗り越え、上場(IPO)に至ったときには、創業者の保有する株式を市場において売却して利益を得ることができます。
一般的に、株式市場における株価評価は、PER(株価収益率=将来の収益の期待値)による評価がされやすく、会社の価値について適正な評価を受けることができます。
これに対し、後述する会社売却(M&A)の場合、会社の将来の収益に対する評価が十分ではない場合が少なくありません。

上場のための費用

上場準備の間に要する費用としては、一般的に以下のものがあります。
実際の金額は、会社規模・業態・依頼先により大きく異なります。

①監査法人費用 年間1000万円から1300万円程度
②IPOコンサルタント費用 年間600万円~1000万円程度
③主幹事証券会社 年間500万円程度
④証券印刷会社 500万円程度
⑤株式事務代行機関 400万円程度
⑥上場審査料及び新規上場料(東証スタンダード) 1100万円

上記に記載した以外にも様々な諸費用が発生し、目安の額として、年間5000万円程度の費用を要するものと考えられます。

会社売却(M&A)

会社売却は、M&A仲介会社またはFA(ファイナンシャルアドバイザー)等に買主候補探しを依頼し、買主候補と金額交渉・条件交渉をして売却をするという手続きです。

会社売却の基本的な流れ

会社売却の基本的な流れは以下のとおりです。
①買主候補を探す
②売却価格の交渉
③売主と買主との間で基本合意書を取り交わす
④買主がデューディリジェンスを実施する
⑤売主と買主との間で最終契約書を取り交わす

会社売却の基本的な流れについては、以下の記事で解説しています。

会社売却の期間

会社売却のために要する期間は、売却検討開始から売却完了までの期間の目安として半年から1年程度です。
最短のケースでは、3か月程度で売却されている事例もあります。
他方、買収ニーズの弱い業種や赤字会社の場合、買主候補がなかなか見つからず、1年よりも長期間を要することもあります。

会社売却の価格(創業者の利益)

会社売却の価格は、年買法(年倍法)・DCF法・マルチプル法(EV/EBITDA倍率・PER倍率)等の計算式を用いて算定します。
しかしながら、これらの計算式を理解して算定を試みたとしても、適正な価格による会社売却は決して容易なものではありません。

会社の価値

会社の価値というのは、売却時点で会社が保有している有形資産よりも、会社の保有する人材・技術・ブランド力・安定取引先といった要素のほうが重要です。
また、売却時点における要素のみならず、会社の将来性や、会社が存続し続けることによって将来的に産み出し続ける利益の算定が必要です。

会社売却(M&A)の難点

会社売却に際しては、上記のような様々な要素や将来性、将来的に産出される利益を総合的に考慮された上で価格決定がされなければなりません。
しかしながら、この点に会社売却の難点が存在します。

会社売却とはあくまで買主と売主との間の会社売買の合意であり、買主が金額に合意しない限りは会社売却は成立しないのです。
いかに売主が、将来予測を含めた正しい金額を提示したとしても、買主が購入をしないと言えばそれまでということです。
この点が上場(IPO)による会社売却(株式売却)と明確に異なる点です。

会社売却の難点の克服

上記の会社売却の難点(適正な価格による売却の困難性)を克服するための方法は以下の2つです。

売主の最大限の利益を実現できる業者に依頼する
買主入札方式(オークション方式)を利用する

売主の最大限の利益を実現できる業者に依頼する
信頼の置けるFA(ファイナンシャルアドバイザー)等に依頼をして、買主を説得するための会社価格算定資料を作成してもらいます。
上述したとおり、すべては交渉事であり買主が納得し合意しないことには、会社売却は成立しません。買主に理解を得られないような算定資料を作成・提示したとしても何の意味もないのです。

買主入札方式(オークション方式)を利用する
買主入札方式(オークション方式)とは、買主との1対1の交渉(個別相対方式と言います。)ではなく、複数の買主候補者に入札をしてもらい、売却価格を決定する方式です。
この方式を用いることにより、一定の競争原理が発生し、本来あるべき会社の適正価格に近付けることができます。

ただし、この買主入札方式も完全なものではありません。
一般的に想像されるようなオークションである「せり売り」ではない点もそうですが、何よりも、株式市場と比較して買主側の参加者が圧倒的に少ないという問題があります。

株式市場においては参加者であるすべての投資家の目に晒され、市場原理により本来あるべき適正な価格が決定されることとなります。
それに対し会社売却では、買主入札方式(オークション方式)を用いたところで、市場原理の作用には程遠いものであり、結局のところ複数の買主候補者が提示した価格から選択するにすぎないこととなります。

したがって、買主入札方式(オークション方式)を用いたとしても売主にとって万全なものではなく、①信頼の置ける業者の最大限の協力を得た上で、会社売却を実現する必要があります。

会社売却のための費用

会社売却のための費用としては、依頼したM&A仲介会社またはFA(ファイナンシャルアドバイザー)への報酬を支払うことになります。
M&A仲介会社またはFA(ファイナンシャルアドバイザー)への報酬の額は、レーマン方式という計算式により算定されることが一般的です。

レーマン方式の一例は以下の表のとおりであり、金額が高額となるとともに料率を逓減する計算式です。

取引額料率
5億円以下の部分5%
5億円超~10億円以下の部分4%
10億円超~50億円以下の部分3%
50億円超~100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

例えば、9億円で売却できた場合、M&A仲介会社等への報酬は以下のとおりとなります。

5億円×5%=2500万円
(9億円-5億円)×4%=1600万円
2500万円+1600万円=4100万円

以上により、9億円で売却した場合の仲介報酬は4100万円(税別)となります。
もし、取引額にかかわらず一律5%であれば、9億円で売却した場合の仲介報酬は4500万円となるところ、レーマン方式の利用により、5億円を上回る4億円の部分の料率が逓減され4100万円という数値になるものです。

なお、上記の仲介報酬以外に、M&A仲介会社等によっては、着手金・中間報酬・月額報酬がかかる場合があります。

まとめ

会社売却(M&A)と上場(IPO)を比較すると、期間の点及び費用面の点で、会社売却のほうが明らかに長けていると考えられます。
また、上場(IPO)の場合、会社売却(M&A)と比較して、手続きの途中で断念を余儀なくされるリスクも高いものと言えます。上場を目指しながら上場に辿り着けない会社というのが現実に多く存在しています。

他方で、上場と比較したときの会社売却の最大の懸念は、適正な価値による売却という問題です。この点に関しては、上場(IPO)のほうが優れているのは間違いありません。
ただし、適正な価値による売却という問題については、会社売却の方法による場合であっても、信頼の置ける業者に依頼することや買主入札方式を用いることにより一定程度克服することが可能です。

上場のための期間・費用面・実現可能性等を含めて総合的に考えれば、会社の現金化という意味では、上場(IPO)よりも会社売却(M&A)のほうが優れていると結論付けることができます。

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