【会社売却Q&A解説】会社売却に弁護士は必要?

Q.M&A仲介会社に依頼しているが、弁護士に頼む必要はある?

Answer

M&A仲介会社に依頼している場合であっても、弁護士への依頼は必要かつ重要です。

会社売却の手続きにおいては、複数のフェーズにおいて弁護士の対応が必要となります。
その中でもとりわけ重要となるのは以下の手続きです。

①基本合意書の締結
②デューディリジェンス
③最終契約書の締結

上記の手続きについて、弁護士の関与無しに対応を進めることは不可能に近いものと言えます。
特に、FA(ファイナンシャルアドバイザー)ではなくM&A仲介会社に依頼している場合、売主の利益の最大化・リスクの最小化を図る会社は存在しないことになります。
これは、M&A仲介会社というのは、買主と売主の双方から委託を受けて対応する立場にあるからです。

もし既にM&A仲介会社に依頼している場合、M&A仲介会社に「当社も弁護士に相談してみたほうがいいですか」と尋ねてみてください。
「弁護士への相談は不要です」「弊社の提携弁護士が確認済みですので問題ありません」というような回答が返ってきた場合、そのようなM&A仲介会社は全く信用の置けない会社です。

中小企業庁(経済産業省の外局)は、令和2年3月、「中小M&Aガイドライン」を策定し公表しました。
このガイドラインには、以下のことが記載されています(番号及び下線は筆者)。

仲介者は、利益相反のリスクを最小限とするため、最低限、以下のような措置を講じることが必要である。

① 譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と仲介契約を締結する仲介者であるということ(特に、仲介契約において、両当事者から手数料を受領することが定められている場合には、その旨)を、両当事者に伝える。

② バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)、デュー・ディリジェンス(DD)といった、一方当事者の意向を踏まえた内容となりやすい工程に係る結論を決定しない。依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝える。

③ 仲介契約締結に当たり、予め、両当事者間において利益相反のおそれがあるものと想定される事項について、各当事者に対し、明示的に説明を行う。また、別途、両当事者間における利益相反のおそれがある事項(一方当事者にとってのみ有利又は不利な情報を含む。)を認識した場合には、この点に関する情報を、各当事者に対し、適時に明示的に開示する。

出典:中小企業庁「中小 M&A ガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」

上記の①は、M&A仲介会社は買主と売主の双方と仲介契約を締結していることを、両当事者に伝える必要があることを定めています。
上記②は、M&A仲介会社は依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝えるべきことを定めています。
多くのM&A仲介会社はこれを遵守しているものと考えられますが、対応が十分でない会社も有り得ることから、売主の利益は売主自身が積極的に確保していく必要があります。

また、中小企業庁の策定した中小M&Aガイドラインによれば、会社売却(M&A)における弁護士の関与の必要性につき、以下のとおり記載されています。

弁護士の主要な業務に契約書等の作成・リーガルチェックがある。
中小 M&A においては、譲り渡し側(又はその経営者等)・譲り受け側が、基本合意書、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書等、何らかの書面を取り交わして、契約等を締結するケースがほとんどである。なお、必要な株主総会決議・取締役会決議の議事録等も準備する必要がある。
こういった契約等に当たっては、契約書等の書面の内容が当事者の合意した事項を正確に反映しているか確認が必要であり、場合によっては内容の確定について交渉を要する。合意内容によっては、契約書等の記載内容と合致しているか中小企業やその経営者が自ら判断することが難しいこともあるため、法務の専門家である弁護士が契約書等の作成・リーガルチェックを支援することが望ましい。

出典:中小企業庁「中小 M&A ガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」

以上のとおり、M&A仲介会社に依頼している場合であっても、弁護士への依頼は重要なものであり、積極的に検討されるようにしてください。

会社を売却する場合のリスクについての解説はこちら

その他の会社売却に関するQ&A